• テキストサイズ

【HP】月下美人

第15章 ナイトメア・ビフォア・クリスマス


 キラは初め、授業どころではないほど気が立っていた。
 しかし淡々と進む教科書の朗読に、徐々に気持ちは落ち着いていった。
 その代わりにセブルスに嫌われてしまった、という事実がキラの心をどんどん沈ませた。
 今日の内に謝りたいと思ったが、上手くはいかないようで。
 元々寮は同じでも学年が違うと校内は広いのですれ違うことは殆ど無い。
 授業後に図書室へ行ってみても、夕食時に大広間で探してみてもセブルスのことを見つけられなかった。
 寮の談話室で彼が現れないかと就寝時刻まで粘ってみたが、無駄だった。
 タイミングが悪かったのか、彼に徹底的に避けられているのか。
(明日は会えるかな…)
 早起きして談話室で彼を待ち構えるしかない。


(それにしても…)
 談話室では、シリウス達悪戯四人組の髪の毛が抜け落ちた、という話で持ちきりになっていた。
 ハゲてしまえ!!という気持ちが通じたのであろうか。
 キラは何か悪戯でもしようとして失敗したのだろうと大抵の人が予想するのと同じように考えていた。

 シリウス・ブラックはもちろんだがジェームズ・ポッターも純血の一族らしく、何かと話題に登る人物だった。
 ひそひそと話される英語の会話は普段は耳に入ってもイマイチ理解せずに聞き流していたが、今日ばかりは聞き耳を立てていい気味だ、と何度もほくそ笑んだ。

「ねぇ、本当にキラは何もしてないのよね?」
「してないってば」
(ハゲてしまえばいい、と心の底から思ったけど)
 報復を恐れてキャリーとアニーが心配そうに何度も確認してくる。
「毛が抜け落ちる魔法なんて知らないもん」
「そうよね…」
「ただ…」
「「ただ??」」
「hagero…えーっと、スキンヘッドになればいいって日本語で言っただけ」
 10回くらい、とは言わずにキラはにっこり笑った。
「えっと…日本語で、よね…?」
「うん。だから、魔法じゃないよ」
「そ、そう…」
「まぁ、私の願いが通じたってことかな」
 ふふふ、と笑うキラを前にキャリーとアニーは黙って顔を見合わせた。



/ 347ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp