第15章 ナイトメア・ビフォア・クリスマス
「キラ、大丈夫…?」
アニーの気遣わしげな声に、キラは振り返る。
キャリーも心配そうにこちらを見ていた。
「わざとじゃないって、きっと分かってくれるわ…今は気が立ってるだけよ」
走り出したキラを追いかけてきてくれたようで、二人はその全てを目撃していたのだった。
「さぁ、行きましょ。授業に遅刻寸前よ!」
「そうだね、キラ、行こう…?」
真一文字に口を引き結んだまま、キラは二人に促されるまま教室へ向かった。
「あーあー、嫌われちゃった」
キラの後ろ姿を面白そうにジェームズが見送る。
「元々オレは嫌いだ!!」
「知り合いなの? さっきの子」
「去年、スネイプのヤツとクリスマスパーティーに来てた」
「へぇ…スネイプとねぇ…」
そう言いながらジェームズがぐしゃ、と髪の毛をかき上げれば、はらりはらりと何かが落ちた。
「ジェームズ、何か落ち……」
「え…」
髪をかき上げただけのはずの左手に、髪の毛がごっそりと収まっている。
「は…?」
「シリウス、君も…」
「ん?」
ばさっ。
そんな音がして、シリウスの襟足の長かった黒髪が全て――抜け落ちた。
「「な…なんだよこれーーー?!!!」」
綺麗さっぱり髪の毛が抜け落ちたジェームズとシリウスは何度も自分の頭を触り、足元に散らばる髪の毛を見る。
「ふ、二人とも…凄く綺麗なスキンヘッドだよ…」
リーマスの言葉に、二人は絶句した。
「おい…お前らは何ともないのか…?」
問われて、リーマスとピーターは恐々自分の髪の毛を確かめてみた。
ずる。
(あ……)
(やっぱり…)
ジェームズたちのように綺麗さっぱりとはいかなかったが、二人の髪の毛も両手にこんもりと抜けた。
四人は保健室へ大慌てで駆け込むも、普段の行いが悪いせいなのか、運悪く校医のマダムポンフリーは不在だった。
次はグリフィンドールの寮監であるマクゴナガルの授業であったためサボるわけにもいかず。
また何か馬鹿をやったんだな…というクラスメイトとマクゴナガルの視線を90分浴び続けることとなった。