第15章 ナイトメア・ビフォア・クリスマス
「見たかい、アイツの顔! サイッコーだね!!」
「んむむー!」
「ああ、君はまだ喋れないんだったね、ごめんごめん」
「っぷは! あー、苦しかった! なんでもっと早く解いてくれねぇんだよ」
「いやぁ、つい、面白くて。ね、ピーター」
「う、うん…」
「リーマス? そんな顔して、どうしたんだい」
「え…あ、うぅん…ちょっと、疲れてるのかな」
四人組の会話が聞こえてきて、キラはそちらに目をやった。
可笑しそうに笑う彼らの顔が、歪んで見える。
(こいつらのせいで…っ)
自分はただ、セブルスを助けようとしただけなのに。
どうして、セブルスに嫌われなくちゃならないのか。
(腹が立つ…!!!!)
目の前の四人に本気で呪いをかけたいとキラは思った。
それなのに、呪いの呪文なんて何一つわからなくて。
かといって、手を上げることもできない。
(悔しい…っ)
杖をぎゅっときつく握り締める。
眉間のみならず、鼻の頭にも皺を寄せてキラは四人組を思いきり睨みつける。
英語が母国語だったら、とキラは思った。
思いつく限りの悪態をつきたくても、それに値する英語がわからない。
『ハゲろ、この糞野郎。最低、最悪、ほんっと腹立つ』
(今すぐ一本残らずハゲてしまえ!!)
ぶつぶつぶつぶつ。
キラはこれが呪いになればいいのに、とひたすら『ハゲろ』を繰り返した。
すると、今になって気づいたのかシリウスがキラを指差してきた。
「あ、お前…!?」
キラはあからさまに嫌そうな顔をして、プイッと四人組に背を向けて歩き出す。
(人を指差すのも気分が悪い…本当、最低の中の最低なヤツら!!)
鼻息荒くずんずん歩いていくキラ。
そんな彼女を追いかけてきたのは、親友二人だった。