第15章 ナイトメア・ビフォア・クリスマス
次の授業は確実に眠くなる魔法史だったので、キラたちは居眠りをしない努力として毎回腹八分ならぬ五分あたりで食事をストップする。
バケットにサラダを挟んだ簡単なサンドを三つ作って、紙ナフキンで丁寧に包んで、風呂敷巾着の中に入れる。
魔法史の授業後に大慌てで口の中に突っ込んでから、これまた大慌てで次の教室に向かうのである。
魔法史の授業が行われる教室に向かおうとする三人をセブルスは大股歩きで通り過ぎていく。
(あ、セブルス…)
最初の一ヶ月は随分と不眠に悩まされていた彼だったが、温室では眠れるのか日曜日はいつも昼寝をするようになった。
そのお陰なのか、ふらふらとしていた覚束ない足元はしっかりとして、以前のように中々の速さで歩いていた。
「おい、ジェームズ。見ろよ」
キラたち三人のほんの少し後ろで、悪戯四人組はダラダラと歩いていた。
自分達を追い抜いていったセブルスにいち早く気づいたのはシリウスだった。
「なんだい…あぁ、スネイプじゃないか」
そういえば最近アイツで遊んでないな。
一旦そんな風に思うと、悪戯心はもう止められない。
ちょうどリリーもいないし、絶好のチャンスじゃないか。
足早に歩いていくセブルスとの距離をつめるべく、四人はキラたちを小走りで追い抜いていった。
そうしてある一定の距離まで来たところで、ジェームズは額にかかるぐちゃぐちゃの髪の毛をかきあげながら杖を構える。
「オレが先にやる」
シリウスが楽しそうにクックッと笑いながら杖先の照準をセブルスに合わせた。
いつもの二段構えだ。
シリウスが足元に魔法を放ち、ふらついたところをジェームズが決める。
リーマスとピーターは周囲にそれを咎める人物…教師、もしくはリリーがいないかどうかを見張る役目を担っていた。
バタバタと自分達の横を走り抜けていく赤いシンボルカラーの生徒にキラは目を向けた。
(シリウス・ブラックだ…!)
現在のところ、キラの遭遇したくない生徒No.1だ。
「ん…?」
そのシリウスの手に杖が握られているのが見えた。
何だか嫌な予感がする。
グリフィンドールの四人組が突然立ち止まる。
その先には、無防備な背中を見せるセブルスの姿。