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【HP】月下美人

第15章 ナイトメア・ビフォア・クリスマス


 10月も半ばに入った頃。
 生徒でごった返す大広間の隅っこで昼食を取っているときだった。
「もうすぐハロウィンだねー」
 突然の切り出しではあったが、それはいつものことなのでセブルスはダモクレスの言葉を無視した。
「ってことは、キラの誕生日ももうすぐってことだよー」
「…そうだな」
 そう言えばそうだった。
 去年のハロウィンはダモクレスのせいで大変だったのだ。
 主にキラが、だが。
「何をプレゼントしようかなー。セブルスはもう決めた?」
「いや…」
「女の子へのプレゼントって結構難しいよね。特にキラはこっちの女子たちと好みが違うっていうかー」
「…そうか?」
「そうなのー! やっぱり日本人って控えめ?っていうの? 気持ちだけで十分です、なんてさー、可愛いじゃなーい」
 いつの間に本人にリサーチしたのだろうか。
 変なところでマメなダモクレスにセブルスはほんの少しだけ感心した。
「何がいいかなー。いつもだったら、香水とか花束とかなんだけど、年下だもんねー」
 長続きはしないものの、ダモクレスの彼女は毎度上級生だった。
 今年度に入って自分が最上級生になったからなのか、そういえば女の影はないようだ。
(キラに香水…)
 似合わない。
 というより、今のラベンダーやバラ、たまに香るアプリコットが一番彼女に合っていると思う。
 花束もそうだ。
 いつも温室でバラと百合の手入れをしている姿を考えれば切花を渡すのは何だか違う気がした。

「セブルス。またインクを渡すのはやめなよー」
 インクでいいか、と思った矢先でセブルスは面食らう。
「図星かー! ダメダメ、そんな愛想のないもの!」
「…うるさい」
 ふん、と鼻を鳴らしてセブルスは立ち上がる。
「ちょっと、どこ行くのー?」
 不服そうな顔をするダモクレスに、セブルスは返却予定の本を見せる。
「あ、図書室ね」
 行ってらっしゃーい、と手を振る友人を背にしてセブルスは足早に大広間を出た。

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