第14章 アプリコットの夢
同じスリザリンに所属する、将来死喰い人になるであろう純血の一族たちだ。
エイブリー、マルシベール、ブラックなど、聖28一族の多くはルシウス・マルフォイを中心として一つのグループを成していた。
というのも、彼らの親のほとんどがアブラクサス・マルフォイを中心として死喰い人として活躍しているからだ。
ルシウスのおかげでハーフブラッドであるセブルスは純血主義のグループの中に身を置く事ができている。
そんな彼の顔に泥を塗ることはできない。
純血の彼らに遅れを取らぬように、とセブルスは気を張っていた。
とはいえ、いつでも起きられるように、とは言ってみたものの、これだけ寝不足の状態で深く眠ってしまえば中々起きられそうにもないだろう。
早々に寝不足を解消しなくてはならない。
すでに日常生活にも影響が出始めているので、セブルスは早速今夜漢方薬を飲むことにした。
「それから…これ、枕元に置いてみてください」
「これは?」
「ラベンダーとバラのポプリです。あまり強い香りはお好きじゃないかと思って、少し飛ばしてみました。少しは落ち着けるかな、と」
小さな巾着袋に鼻を近づけてみれば仄かに香った。
「…枕元に置けばいいのか?」
「はい。私たちは観賞用に置いてあった銀杯を使ってます」
そんな使い方をしていいかどうかはわかりませんけど…と苦笑いを浮かべながらキラはそう言った。
「…そうか」
あまり期待はできないだろうな、と思いつつセブルスはポケットに巾着と薬を仕舞い込んだ。
いらない、と突っぱねられるかと思ったがセブルスは素直に受け取ってくれた。
(良かった…)
ラベンダーの香りには神経を沈静化させる効果がある。
不眠症の改善に良いとも言われている。
そしてバラの香りにはリラックス効果がある。
それぞれ単独の香りだと男性には強すぎるかと考え、キラは二つをミックスさせたポプリを作った。
これですぐにセブルスの不眠が解消されるとは思えなかったが、気休めくらいにはなればいい。
朝食を終えてふらふらと広間を出て行く彼の背中をキラは長らく目で追っていた。