第14章 アプリコットの夢
その夜は目が冴えてとても眠れなかった。
穢れた血を排除する、その一部始終を自分は見ていたのだ。
興奮せずにはいられない。
夏の間はここにいればいいと言うルシウスの言葉に甘えて、セブルスは用意された部屋で天井を見上げていた。
スピナーズエンドの家には、もう戻りたくない。
いや…あんなところ、戻るべきところではない。
自分はもう、違う世界に足を踏み入れたのだ。
そうして夏の間、セブルスは複数回に渡って死喰い人の活動を目の当たりにした。
その度に、今の自分の実力はこんなものでいいのか、と焦るようになった。
ルシウスの屋敷で過ごしながら、闇の魔法の習得、開発に勤しむ。
魔法の試し打ちはルシウスの元を時折訪れるレストレンジやエイブリーとの模擬決闘で行った。
また、死喰い人の目指す不老不死に関する資料は、マルフォイ邸の書架に驚くほど沢山揃えられていた。
さすが貴族と言ったところか、金に物を言わせてかき集めたようだった。
目の下にはくっきりとした隈が出来るほど、セブルスは寝る間も惜しんで机にかじりついた。
その内、変な夢を見るようになって唯でさえ短い睡眠時間がさらに短くなった。
眠ろうとすれば、瞼の裏に緑の閃光が走る。
そうすれば嫌が応にも気持ちが高ぶって眠れなくなるのだ。
ホグワーツに戻ってくればその興奮も冷めるだろうとセブルスは思っていたが、どうやらそうではないらしかった。
頭が痛い。気休めにこめかみを揉み解すが、スッキリはしなかった。
昨日、居眠りしたキラの隣で眠れたのが不思議だった。
それまでは何度目を瞑って見ても眠れなかったのに。
(アプリコットティーには沈静作用があるのか?)
分からないが、落ち着いた気持ちにはなった。
温室でのティータイム以外に口にすることは滅多にないので、それが正しいかどうかは分からないが試してみる価値はあるだろう。
そう思ったところに隣のベッドが軋む音が聞こえてきて、セブルスは起床時間が間際に迫ってきたことを知った。
はぁぁ、と大きなため息をついてセブルスは寝間着を脱ぎ捨てた。