第14章 アプリコットの夢
『ホグワーツに我々の同志を送り込むことは随分前から考えていたのだが…ほぼ全ての教科において優秀な者、というのは…嘆かわしいことだが、多くはない。そして…私のような立場の者が教職を求めればまず怪しまれるだろう』
確かに、貴族という立場で職を求めるということは有り得ない。
成績に関しては、あのグリフィンドールの奴らには負けないようにとしてきたことが功を奏したらしい。
夏休み前の進路調査の面談ではスラグホーンにはまだ進路は決めかねている、という話はしていた。
教職を、と言ってもおそらく問題はないだろう。
そう思ったときだった。
突然ルシウスが左側の袖を捲り上げる。
『――呼び出しがかかったようだ』
赤黒く変色している闇の印からセブルスは目が離せない。
これが、偉大な闇の魔法使いの印。
もうすぐ自分の左腕にもこれが刻まれる。
そのときをずっと待ち望んできたのだ。
印に釘付けになっているセブルスの様子にルシウスはふっと笑みを漏らす。
『ついて来たければ、好きにするといい』
ルシウスの言葉に、セブルスはしっかりと頷いてみせた。
そこから先、ルシウスとどんな会話をしていたかははっきりとは覚えていない。
ただ、気づけばとある屋敷の前にいた。
穢れた血の殲滅という壮大な計画が遂行される場所…つまりマグルの住む屋敷である。
その屋敷の真上に闇の印が打ちあがれば、黒いフードと仮面ですっぽりと顔を隠した死喰い人たちがどこからともなく現れた。
セブルスは離れたところで身を潜め、その様子を隠れて見ていた。
彼らが中へ侵入してしばらくすると、突然激しく争う音が聞こえ、窓がいくつも割れた。
飛び交う緑色の閃光が失われた窓から漏れる。
柄にもなく胸が高鳴った。
思わず身を乗り出して、目で、耳で、肌でその光景を感じた。
怒号、抗う声、何かが倒れる音、悲鳴、そして――静寂。
死喰い人たちは静かに屋敷から姿を現す。
沈黙の中に、只ならぬ熱気が満ちていた。