第13章 二つ目の年
翌日からはもう通常の授業が始まった。
去年は教科書を買った後、しばらく祖母と一緒にイギリスに滞在していたのでその間に予習ができた。
しかし、今年は両親と早めにイギリスに来てしまったため、祖母との予習は一切ない。
書き込みが全くないまっさらな教科書に、キラは不安を隠せない。
幸い、明後日が日曜日である。
温室に来るであろうセブルスを当てにするしかないのだが、彼が答えをすぐに教えてくれるわけもない。
土曜は丸一日休みのため、キラは朝から夕方まで図書室にこもり切りになった。
そうしてどうしても分からないところだけをピックアップしておいて、キラは日曜の朝からサンドイッチを持参して温室へと駆け込んだ。
温室にはまだ誰もいなかったが、キラは慣れた手つきで花壇の端に隠しておいた小さなテーブルとソファを取り出して、魔法を使ってあっという間にテーブルセットを完成させた。
魔法を使えない期間が随分長かったが、腕は鈍っていないようだった。
テーブルにサンドイッチの入ったバスケットと教科書、そしてトリカブト考察記を置いて、長い髪をくるりとお団子に結い上げる。
園芸用手袋を嵌めて、とりあえずは花壇の手入れを、とキラは作業を始めた。
屋敷しもべ妖精は随分丁寧に花の面倒を見てくれていたようで、虫食いなどもほとんど見られなかった。
ブルーム家で栽培等の作業を任せられるのもわかる気がした。
そうしてしばらくたった頃。
「ハイ、キラ。久しぶりだねー」
二つの足音に、キラは立ち上がって振り向いた。
「お久しぶりで、す……?」
三ヶ月の間離れていたからなのか、二人の背が随分大きく見えた。
「あ、やっぱりわかる? 今、成長期ってやつでねー。10cmくらい伸びたんだよ」
「10cmもですか?!」
すごいですね、とキラは二人をまじまじと見る。
「――セブルス、少し…痩せましたね?」
「…そうか」
実際には、少しどころではなかった。
キラが気を使っているのは明白であったが、セブルスは相槌だけを打ち、さっさとソファに腰を沈めた。
そうして深いため息をつき、眉間に皺を寄せたまま瞼を閉じる。