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【HP】月下美人

第13章 二つ目の年


「…グラエムも、あるんですか?」
 アニーは見えないのに?と思いながら、キラは問いかける。
「そうだよ」

 悲しげに微笑むグラエムにキラはハッとして小さくごめんなさい、と頭を下げた。

「まぁ…そういうこと。だから、まだアニー達には見えないんだよ」
「……」
 キラはセストラルに一旦目を向けたが、すぐに足元に視線を落とした。
「気にすることはないよ。ほら、そろそろ出発の時間だ。馬車に乗って」
 にっこり笑って、グラエムは三人の背中を押す。
「それじゃ、また後で」
 イザドラの待つ馬車へ戻るのだろう、グラエムは足早に去っていった。
 馬車の窓から、セストラルの黒い鬣が見える。
 この光景が一部の人間にしか見えないというのは、何とも不思議な気分であった。
 魔法界というのは、本当に変なところだ。
 ガタガタと馬車に揺られながら、在校生たちはホグワーツ城へと運び込まれていく。


「去年はあの扉の向こうでドキドキしていたのよね」
「本当…スリザリンになって良かった…」
「もう一年経つんだね」

 大広間のスリザリンのテーブルについた三人は、後ろの扉を見ながら去年のことを思い出す。
 レイブンクローに入りたかったと思った自分が、今では嘘のようだ。
 スリザリンに入っていなければ、キャリーやアニーとこうして今でも友達でいられなかったかもしれない。
 それにセブルスとダモクレスとの出会い。
(そういえば…今年で、二人は卒業しちゃうんだっけ)
 何となしに二人の姿を探してみるが寮生全員が同時刻に席についているので、見つけることは叶わなかった。


 
 組み分けが終わり、ダンブルドア校長が立ち上がる。
 新入生への祝いの言葉に始まり、幾つかの注意事項が伝えられた。
 去年と全く同じで、禁じられた森には入ってはならないこと、廊下での魔法の使用は禁止、などである。
 そうしてとても簡単な挨拶が終われば、新入生歓迎用のご馳走が目の前に現れた。
 今年は監督生の後に続いて広間を出て行かなくてはいけない、ということはないので、混雑を避けるため三人はゆっくりと食後のデザートを楽しんでから寮に戻った。

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