第11章 Dの道
『1500年代には狼を駆除する方法としてアコナイトを生肉に挟んで毒餌とした。よってアコナイトは"狼殺し"と呼ばれることもある』
「wolf's baneね…」
ダモクレスは顎に手を当てて、その一文を繰り返し読んだ。
(これは、使えるかも)
昼間、キラから聞いた話が頭の中に蘇ってくる。
ふふ、と突然笑みをこぼす自分にセブルスは訝しげな視線をよこす。
「いいこと思いついたよ」
「良いこと?」
「被験者がいないんじゃ難しいし、やっぱり一旦は病院勤めでもして人脈広げないとダメだよね」
「何の話だ?」
「なんのって、俺の進路の話。しばらくは病院に勤めてみようかな、って」
唐突な話題にセブルスは一瞬呆気に取られた。
しかしすぐに思い出す。
確かダモクレスは魔法薬の研究開発のため、ゾシムス研究院へ行くと言っていたのではなかったか。
「院に行くのはやめたのか」
「いや、行くよ。行くけどさ。ゾシムスじゃなくて、ディリスに行こうかなって」
その言葉に、セブルスは聖ディリス魔法疾患傷害病院がどんなところであったかを記憶の中から引っ張り出す。
そこは病院と研究院がくっついているため、新薬を積極的に使用していく攻めの病院だった。
その分失敗もあるが、一縷の望みをかけて…という患者が訪れることも少なくない。
「……NEWT試験は大丈夫なのか?」
「マンゴほど大変じゃないよー。ディリスは薬学の方に力入れてるから、そっちはOがいるけど変身術はAで良いから」
「薬学のOなら余裕だな」
「でしょー。研究だけならゾシムスでもいいけど、ディリスの方が被験者いっぱい来ると思うんだよね。お忍びも多いって聞くし、研究捗りそうな気がする」
「研究テーマは?」
「ひ・み・つ…ちょっと、そんな顔しないでよー。まだこんなのかなってぼんやりとした感じだし、もうちょっと固まったら言うよ?」
「…いや、別に良い。興味はない」
「そんなこと言って、本当は興味津々なくせにー。その内教えてあげるよ」
調子が上がってきたダモクレスは、セブルスの眉間の皺が深くなるのもお構いなく楽しそうだ。
そんな彼からひったくるようにして本を取り戻し、不機嫌も露わにセブルスはソーセージをフォークでぐさぐさと何度も突き刺してから口に運び始めた。