第11章 Dの道
調べ物のために図書室にやってきたセブルスは、ゆら、ゆら…と揺れているキラを見つけた。
「おい…寝てるのか…?」
そっと声を掛けてもキラはきゅっと一瞬眉をひそめるものの、まどろみの中。
夕食で帰る頃に起こせばいいだろう、とセブルスはそれ以上何をすることもなく目当ての書架へと向かう。
両手いっぱいに書籍を抱えて席へ戻ってくると、彼女は右に傾いた状態で眠っていた。
中々のバランスだとちょっと感心してしまうほどではあったが、このままだと椅子から転げ落ちそうに見えた。
セブルスは机上に書籍を置いて彼女の向かい、いつもの位置に座りかけたところで、動きを止める。
「……」
いったん腕組みをして、傾いた彼女を見つめて。
そして小さくため息をついた。
セブルスは机をぐるりと回り、彼女のすぐ右隣に座って背を向ける。
書籍を全て引き寄せて、一番上の本を手に取った彼は背中を丸めて読書に没頭していった。
(…こんなところに、壁…あったっけ…)
一瞬浮上しかけるキラの意識。
けれど、再び沈んでいく。
もう少しこのままで――。
そうして数時間が経った頃。
気づけば、セブルスの肩はがちがちに凝り固まっていた。
背中に感じる重みは、当初より随分しっかりとのしかかってきているようで、キラがいまだに眠りから覚めていないことがわかる。
(…もうそろそろか)
長時間同じ姿勢をしていたためにぎこちない動きで振り返った。
「ん…」
わずかな振動にキラはうっすらと瞼を開いた。
緩慢な動きで体を起こせば、誰かの黒い瞳と視線がかち合う。
「……せぶ、るす…?」
ぼんやりとした頭が、三秒後に覚醒した。
半分ほどしか開いていなかった目がパチリと開く。
「あ、あれ?いつの間に?! もしかして…私、ずっと寄りかかってましたか?」
キラは瞼をこするふりをしながら涎が垂れていないかをそっと確認する。
(危ない…セブルスの服を汚すところだった…!)
「図書室は寝るところじゃない」
「す、すみません」
はぁ、とため息をついたセブルスの手元には見慣れぬ挿絵の入った書物。