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【HP】月下美人

第11章 Dの道


 中国や日本ではトリカブトは漢方という東洋医学の薬として使われている。
 もちろんそのままで使うのではなく、減毒処理をしてから使用するし、用量は極めて少なく、他の薬と合わせるのが一般的だ…と、キラは祖父から聞いた話をそのまま話した。


「KAMPO…」
「mm... It's Chinese medicine.」
「Oh,I know!」

 漢方か…なんか聞いたことあるよ、とダモクレスが頷いてくれたので、キラはほっと胸を撫で下ろす。
 やはり昔からある伝統的なものを説明するのは難しい。

「毒が薬になるなんて、さすが中国だねー」
「そうですね。もしかしたら中国産か日本産のトリカブトでないと薬にはならないのかもしれません」
「なるほどねー。でも減毒処理って…一体どうするの?」
「さすがに私もそこまではわかりませんが…手間はかかっても難しいものではないと思います」
 中国三千年の歴史というからには、漢方だってそれなりに古いはず。
 科学の力を使うなんてことはないに違いない。
「長時間煮るとか、きっとそんなものじゃないかと」
「ふぅーん。ちょっと気になるね」
「祖父に聞いてみましょうか?」
 確か祖父の知り合いに漢方に詳しい人がいた気がする。
「んん…いや、いいや。ありがと」
「そうですか」
「うん、聞きたくなったらそのときに聞いてもらうってことで」
「はい、では機会があれば、ですね」
 そんな機会、中々ないだろうなと思いながらキラはふふ、と笑った。
「それじゃ、俺はそろそろあっちに本を探しに行くよ」

 そう言ってダモクレスは立ち上がり、離れた書架を指差す。
「じゃ、寝ないで頑張って」
「努力します…」
 彼の言葉に苦笑いを返して、キラは再び草花図鑑に視線を戻した。
 何ページか読み進めていると、ダモクレスと話したことで去っていた眠気が再びキラの元に帰ってきた。
 何度かあくびをかみ殺していたが、その内に瞼が重くなってくる。

(ね、眠い…)

 ダモクレスに頑張ってって言われたところなのに、と頭の片隅でもう一人の自分が呆れている。
 けれど、それすらどんどん遠ざかっていった。



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