第2章 ホグワーツ魔術学校
「お勉強が終わるまでこの部屋からキャリーを外に出さないで、ってママが命令したの。そしたら、トイレにさえ行かせてくれないのよ。それくらいいいじゃない!って言ってもダメなの。扉は魔法で閉じられててビクともしなくて、本当にあのときは大変だったわ。」
「頭が悪いんだって、グラエムも言ってたわ。屋敷しもべ妖精だから仕方ないけど…」
「そ、そうなんだ…」
アニーがそんな風に言うとは思いもしなかったのでキラはちょっとびっくりした。
「でも、妖精って言うくらいだし、可愛いんじゃないの? ほら、おとぎ話に出てくるような小さい女の子みたいな…」
羽が生えた、手のひらに乗るほど小さくて可愛らしい妖精。
キラのイメージはまさにそれだった。
「まさか! 可愛さの欠片もないわ」
大げさなくらいにキャリーは首を振って否定する。
見れば、アニーも顔をしかめている。
「全然可愛くないよ…」
「そ、そっか…」
(どんな妖精なんだろう?)
キラはまだ見ぬ屋敷しもべ妖精に思いを巡らせるのであった。
メイン料理が無くなると器がパッと消えて、今度はデザートと紅茶が現れた。
すでにお腹いっぱいになっていたキラはデザートは取らずに紅茶に口をつけた。
しばらくするとそれらもテーブルから消えて、在校生がぱらぱらと席を立ち始めた。
「一年生! 私たちの後に着いてきて」
イザドラがよく通る声で呼びかけている。
スリザリンの新入生はイザドラに続いて大広間を出て行く。
三人もそれに続く。
廊下を進むと、他寮の新入生が階段付近でごった返している。
一部の生徒が動く階段の上でおろおろしているのが見えた。
「大丈夫だ!そのまましばらく待っていればまた戻るから」
監督生であろう生徒の言葉が届くやいなや、また階段が動き出した。
「た、大変…」
キラは開いた口がふさがらない。
どこの世界に位置自体が動く階段があるだろう。
行きたいと思ったところにすぐに行けないなんて、不都合極まりない。
「余所見してると置いていくわ。ちゃんと着いてきて!」
ほとんどの新入生が動く階段に目を奪われていたものだから、イザドラは大きな声を出さざるを得なかった。
キラたちスリザリンの寮へはその階段のすぐ隣のドアの向こうであった。