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【HP】月下美人

第10章 見つめるその先


「……」
 セブルスはそっと手のひらに花弁を受けた。
 今にも消えてしまいそうなほどに淡い色。
 キラを見れば、彼女の緑色の瞳と目があった。
 舞い散る花びらの中、キラが笑いかけてくる。

 ああ、あの笑顔には見覚えがある。


「セブルス。誕生日、おめでとうございます」 


 セブルスの足元に桜色の絨毯が出来上がる。
 ひらひらと舞う桜の中、セブルスは呆然と立ち尽くしているように見えた。
 これが最後だ、とキラはもう一度呪文を唱える。
 朱色のオニユリを一輪、セブルスの前に差し出した。

「This is Tiger Lily. You love Lily,don't you?」

 セブルスは百合が大好きですよね。
 その言葉にセブルスはハッとした。
 にっこり笑って自分に百合を差し出すキラの後ろ。
 少し離れたところに、彼女は居た。






 

 キラとスラグホーンの魔法に、中庭を通りかかった生徒が皆足を止めた。
 それはグリフィンドールの生徒たちも例外ではなかった。
「素敵ね…」
 風に乗って花びらがリリーのところまで舞ってくる。
「見てリリー、これが花みたいよ」
「まぁ可愛らしい」
 友達が丸みのある花を一つ二つ拾い上げ、リリーの手のひらに乗せた。





 手のひらの花に微笑みかけるリリーの姿から、目が離せない。
 ヒラヒラと舞う花の中、笑っていたリリー。

『すごいわ! セブ!! こんなにお花がいっぱい!!』
『君にもできるよ。魔法使いなんだから』
『本当? とっても素敵!!』

 丘の上、二人寝転んで空を見上げる。
 魔法で花を降らせば、リリーは満面の笑みで空に手を伸ばして喜んでくれた。



「セブルス?」
 百合を受け取ろうとしない彼にキラは首を傾げる。
「Lily…」
 掠れた声が、確かにそう呼んだ。
(何だろう…?)
 何の気なしに振り向いてみれば赤毛の女子生徒が桜を手に笑っているのが見えた。
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