第10章 見つめるその先
『昼食後に中庭に来てください キラ』
そんな手紙が朝一番にセブルスに届いていた。
「何だろうね?」
「…さぁな」
制服の内ポケットに手紙を押し込み、かぼちゃのポタージュスープを口にする。
今日は誕生日だというのに、ダモクレスのせいで散々な寝起きだった。
確かに、自分が望んだプレゼントには間違いない。
(間違いないが…枕元に置くものじゃないだろう…)
恨めしげに元凶を睨むと、彼は大仰に肩を竦めた。
ダモクレスがセブルスへの誕生日プレゼントとして選んだのは、セブルスが欲しいと言っていた魔法薬の材料。
それはとある魔法生物の体液で、一滴でもかなりの悪臭がする。
それは小瓶に入っていたのだが蓋は緩く。
セブルスが寝返りを打ったため小瓶が傾き、悪臭が漏れた。
異臭に気づいたセブルスが飛び起きたとき、小瓶はさらに傾いて中身がとろりと零れ――。
「大惨事、ってああいうことだよね!」
あまりの臭さにダモクレス自身も大慌てだった。
朝から二人して杖を振り回すことになったのだ、午前中の授業が終わってもセブルスの機嫌はまだ悪かった。
昼食を早々に食べ終えたセブルスはがたりと音を立てて立ち上がる。
「ちょ、ちょっと待ってよー!」
後ろでダモクレスが声をあげるが完全に無視を決め込んでセブルスはさっさと大広間を後にした。
一方、キャリーとアニーも大急ぎで昼食を平らげて中庭へ向かっていた。
昼食を取っていないキラのためにバスケットにはチキンを二つとパンを突っ込んできた。
「一体何を見せてくれるのかしら」
「プレゼントなのに、あたしたちも良いのかな…」
「うーん…あら? あれ、スラグホーン教授じゃないの」
「本当だ…」
二人はキラとスラグホーンが立っているのを見つけて手を振った。
「間に合ったかしら?」
「うん、大丈夫。まだセブルスも来てないから」
「スラグホーン教授までいらっしゃるなんて…どういうことなの?」
こそりとキラの耳元でキャリーが尋ねる。
「ちょっとお手伝いしてもらおうと思って」