第10章 見つめるその先
大広間は混雑していた。
長テーブルのちょうど真ん中辺りに座っていたキャリーがキラに気づいて手を振ってくれる。
「よくわかったね。人多かったのに」
「いつもキャリーが一番に見つけてくれるよね…」
「私、人を見つけたりするの得意なのよ。それにキラはちょっと…うん、目立つからすぐわかるわ」
「そう?」
体は小さいし、特別変わった格好をしているわけでもないのにな、とキラは首を傾げながらチキンにかぶりつく。
「まぁ目立つというよりは…なんとなく目に付くの」
「…それ、あんまり良くない意味じゃない?」
「あら、そうかしら」
それは失礼したわ、とキャリーは目をパチパチと瞬かせた。
「プレゼント、決まったんだね…」
アニーがふわりと顔を綻ばせる。
どうやらキラはかなりスッキリした顔をしていたようだ。
「うん!」
「何にしたの?」
「んー…内緒。でも、明後日には見せられると思う」
むぐむぐ口を動かしながらキラは目を輝かせる。
「見せる?」
どういうことかと目を見合わせる二人。
「まぁ、楽しみにしててよ」
この後の罰則が楽しみでならない。
あわよくば、桜以外の花も出せるようにはならないだろうか。
そうすれば、一番好きな花をいつでも見ることができるのだ。
なんて素晴らしい魔法なのだろうか。
ふふふ、とキラは期待に胸を膨らませる。
「あ、ねぇ二人とも。私この後罰則があって」
「罰則ですって? どういうこと? まさか減点されたんじゃないでしょうね?!」
軽い気持ちで切り出したが、当然キャリーは眉を吊り上げてスリザリンの砂時計を凝視した。
「だ、大丈夫、減点はなかったから!」
「何したの…?」
「その、廊下で魔法使っちゃって」
「…キラが勉強熱心なのは知ってるけれど、そこまでとは思わなかったわ。それで、誰に見つかったの? Mr.フィルチ…だったらもっと騒ぎになってそうね」
「ううん、スラグホーン教授」
「良かったね…」
自寮の寮監であれば多少は甘く見てくれるだろう。
グリフィンドールの寮監は別だろうが、スラグホーンは元々そこまで厳しい方ではない。
安易に杖を取り出すべきじゃないな、とキラは自分の幸運に感謝した。