第10章 見つめるその先
翌日、月曜日。
セブルスの誕生日プレゼントはまだ決まっていなかった。
(あああ、どうしよう…)
自分の誕生日に何も貰っていなければ、バースデーカードだけでも良かっただろう。
本人は肯定も否定もしなかったがあのガラスペンとインクを贈ってくれたのはセブルスだ。
クリスマスのプレゼントが少し…キラにとってはそれなりに高かったので、今の予算ではどうにも厳しい。
しかも誕生日はもう明後日で、梟便での通販はもう間に合わないのは確定している。
大広間で朝食を取りながらうんうん唸る。
長テーブルの端の方にセブルスの姿が見えた。
一人、ティーカップを傾けている。
大抵は下を向いているか、本を読みながらだったが、どこか遠くの方を見ているようだった。
「はぁぁぁぁぁ~」
「また盛大なため息ね」
「まだ決まらないの…?」
「うん…」
昨夜キャリーとアニーにも相談したが、ピンとこない。
というか、キャリーの提案するものはまず高くて買えない。
アニーはグラエムに渡したものを教えてくれたが、手作りのケーキやらクッキーやらで用意できなかった…上に、人様にプレゼントできるほど料理やお菓子作りに自信はない。
キラは出口の見えない世界に迷い込んでいた。
(あの不思議なクリスマスの部屋はなんだったんだろう…)
あの部屋のおかげでクリスマスプレゼントが決まったので、とても恋しい。
「どうしよう……」
テーブルに突っ伏して額をぐりぐりと押し付ける。
同じようにインクをプレゼントするというのも芸がない。
深く考え過ぎてどんどん泥沼に沈んでいく。
そうして気づけば今日一日の授業は終わってしまった。
キラはどんよりした気持ちで温室へ足を運んだ。
「ん…順調順調」
ダモクレスの薬草たち、セブルスの百合、そして自分のバラに水遣りをして葉の生育具合を確認する。
百合はまだまだ咲かないが、茎や葉も立派だ。
種からのバラはひょろひょろとしてはいたが、このまま行けば5月にはいくつか咲くだろう。
(こっちの春ってどんな感じなのかな)