第10章 見つめるその先
合点が行ったように頷くキラを、グラエムは少々複雑な気持ちで見ていた。
彼女に説明したことは、間違いではないが全てではない。
死喰い人の話をしていると、皆自然と聞き耳を立てるのを知っている。
スリザリンには死喰い人の親を持ち、いずれは死喰い人となる者がいる。
そうでなくても憧れている者もいる。
だから、下手なことは言えないのだ。
自分やアニー、カドワース家に何かあってはいけない。
というのも、彼らは今や犯罪集団と変わりない。
一昔前までは、今ほど過激な活動はしていなかったはずだが、ここ何年もマグル擁護派を次々と抹殺している。
事態は重く、捕らえられてアズカバンへ収監される者もいるぐらいだ。
しかし、キラは日刊預言者新聞を読んでいる様子はないし、こちらの世界のことはあまり知らない。
死喰い人のことも知らなかったくらいだ。
これまで日本に住んでいたのだから当然と言えば当然なのだが、そんな彼女にその事実を言うべきか否か。
純血主義の中で育てば大体こちら側の考えになるが、あのシリウス・ブラックのようになってしまえば、自分たち純血から離れていってしまうだろう。
そして、あのブルーム家の孫娘にそんな風になるように仕向けた!変な知識を吹き込んだ!と言われてしまってはたまったもんじゃない。
グラエムは純血主義ではあったが、マグルを殺さなくてはならない、とは思っていなかった。
わざわざ自分の手を汚してまでそんなことをする必要性があるとは考えられない。
とはいえ、表立ってそのように言うことはない。
色々なしがらみがあるのだ。
自分が純血で、マグル擁護派でなければとりあえず襲われるようなことはないが、安易な発言は控えたい。
死喰い人の実際の活動にはほとんど触れず、昔聞いた理念だけを伝えた。
彼女が尊敬する師としてくっついているセブルス・スネイプもいずれはその一員になり、マグルを殺めることになるだろう。
彼がつるんでいるのは祖父、父共に死喰い人である純血一家のエイブリーとマルシベールだ。
ホグワーツ卒業と同時に"そう"なるのはわかりきったことだった。