第10章 見つめるその先
「…ブラックも載っているんですね」
リストの中のBlackの文字を指でなぞる。
シリウス・ブラックは、よほど自分の家が嫌なようだった。
彼自身もグリフィンドールだし、確執は深そうだ。
「ああ。スリザリンにもいるよ」
「え?」
「シリウス・ブラックの一つ年下の弟、レギュラス・ブラックだよ」
レギュラスはシリウスと違ってブラック家に相応しく品行方正だという。
「彼は非常に優秀な死喰い人になるだろうね」
「死喰い人……?」
「そう。簡単に言えば…純血至上主義の一派だね」
「純血…至上主義?」
純血主義とはまた違うのかと首を傾げるキラに、グラエムは穏やかな笑みを浮かべた。
「乱暴な言い方をすると、純血以外はすべて不要、排除する、っていう主義のことなんだけど」
落ち着いた口調とは真逆の内容にキラはぎょっとする。
「は、排除って…」
「まぁ…一部過激な者がいることは否定できないけど…元々、死喰い人とは"死を喰らう者"…つまり、死に打ち勝つ者、のことなんだ。誰しも死は免れない。でも、僕ら魔法使いはマグルよりも長生きでね。倍くらい違うんだよ」
「えっ?!」
再び目をむくキラに、グラエムとアニーはよく似た顔でくすりと笑う。
「ダンブルドア校長は随分前に100歳を超えてるのよ…」
「そ、そうなの?!」
お爺ちゃんだなぁと思って見ていたが、すでに一世紀生きているだなんて。
「だからね、マグルの血が入ると寿命が短くなる、だから純血が重要なんだ…って考えが根本にある。もちろん、そういう効果を求めて魔法薬も研究されてはいるけどね」
「魔法薬の研究も…」
わからなくもない。不老不死だなんて、人間誰しも一度は憧れる。
どこかで読んだか聞いたか、永遠の若さのために人の生き血を啜るだとか、肝を食べるだとか…人魚の肉を食べて永遠に生きる、八尾比丘尼の話もあった。
「それから…スクイブが生まれやすくなるから、っていうのもあるし」
「じゃあ、死喰い人は皆純血の人なんですか?」
「まぁ…ほとんどはね。この一覧に載ってる聖28一族の中にもいっぱいいるだろうけど、純血じゃない人たちもいるって話だよ」
「不死なら、マグルも憧れますもんね」