第10章 見つめるその先
「キラ…何を持ってるの…?」
大事そうに抱えているものが気になってアニーが尋ねてくる。
(どうしよう、このまま聞いちゃおうか…)
どういう反応をするかはわからないが、グラエムなら色々と詳しく知っているだろう。
本を読むより建設的かもしれない。
キラは抱えていた本を二人の前に差し出した。
「"純血一族一覧"か…どうしてこれを?」
「えーっと。この前のパーティーで聞いた名前があるかな、って思いまして」
グラエムの視線が少々痛い。
カドワースの名が載っていないのだから、当然と言えば当然だろう。
キラは思い切って尋ねることにした。
「でも、ここにカドワースも、ヘンリンソンも載ってなくて…この本って、あんまり当てにならないんですかね? そんなに古くなさそうなのに、変ですよね」
じっと自分を見つめるグラエムに緊張してまくし立てる様になってしまう。
「ああ…そこには聖28一族と呼ばれる家しか載ってないんだよ」
グラエムは珍しく不服そうな顔を表に出しつつ、「まぁ座りなよ」とキラに視線でソファへ腰掛けることを促した。
「聖28一族って、何なんですか? キャリーがそう言ってたのは聞いたことがあるんですが」
「純血の中の純血…ってことにはなっているんだけど。この28の家以外にも純血はたくさんいるんだよ。僕らカドワース、ヘンリンソンもれっきとした純血だよ。ただ…ほんの少し、家系図が短いだけでね」
ちょっと長い歴史があるからって、それ以外は純血じゃないみたいな書き方をしてるのが気に入らないんだよね、とグラエムは肘掛けに頬杖をつく。
どうやら、聖28一族はかなり古くから家系図があり、脈々と純血を受け継いで来ているらしい。
三代続けば純血に相違はないというが、やはり十代以上も続くような純血一家からすれば、三代なんて混血だ、という風潮になるのは致し方ないことだろう。
「なるほど…」
「この本は、子どもの結婚相手を探すためにあるんだ」
「えっ」
「ここに載っている家の子ども同士で婚約させるんだよ。小さい内からね。今のところ近親婚、とまではまだ行かないだろうけど…後何代か続くとそうなるんじゃないかな」
「へぇぇ…」
純血主義を貫くのも苦労するようだ。