第10章 見つめるその先
セブルスの誕生日プレゼントを考えなくてはならないのだが、彼の赤ふんどし姿がチラついて離れない。
もういっそのこと本当に赤ふんどしを贈ってやろうかと思ったが着け方を知っているはずもない。
(忘れよう…忘れろ…!)
キラは気を紛らわそうと、その足で図書室へ向かった。
普段なら見向きもしないものにしようと、返却棚にある戻ってきたばかりの本の中から適当に一冊抜き出して入り口から一番近い椅子に腰掛ける。
それからしばらく手元の本を眺めていたが、その内容はまったくと言っていいほど頭に入ってこない。
やっぱり興味あるものじゃないとダメか、とキラは手にしていたクィディッチのルール本を返却棚に戻す。
と、その隣に"純血一族一覧"があった。
キラはそっとその本を手にする。
そこにはマルフォイの他いくつか知った名前があったが、純血のはずのキャリーやアニーの生家が載っていなかった。
「あれ…?」
ダモクレスの家の名もない。
彼は純血だと言っていたわけではないが、そうだろうと思っていたのに。
スリザリンにおいてハーフブラッド、マグルであるということは、かなりのハンデを背負うことになる。
皆表立って純血主義を抱えているわけではないが、他寮に比べて圧倒的に純血が多かった。
キラはブルーム家の孫娘だから面と向かってのマグル扱いはされていないが、他の生徒が自分の生まれについて陰口を叩いているのを知っている。
他にもハーフブラッドだとされて下に見られている生徒もおり、それはセブルスも同じだった。
初めてそれを耳にしたときは驚いた。
セブルスは母が魔法使いで父はマグルだそうだ。
とはいえ彼はそもそも他人との付き合いが悪いので致し方ないとも言えた。
雰囲気が暗く、目つきも悪いので余計に評判が悪い。
また、見目の良いシリウスとしょっちゅう衝突していることもあって、女子生徒からは特に嫌われているみたいだった。
『マグルのくせに』『これだからハーフブラッドは』などという言葉はスリザリンの口癖みたいなもので、聞かない日はないくらいである。
だからこそ、そのような陰口が一切ない三人は純血だと思っていた。
一体どういうことなのだろうか。