第10章 見つめるその先
「そりゃーアレでしょアレ。ボクタチお年頃、なんだからさー」
「あれ…?」
一体アレとは何なのだろうかと頭をひねるキラに、ダモクレスが自分の頬を両手で覆い、わざとらしく恥ずかしがるようなポーズをする。
「ダメダメー。キラにはまだ早いから…あ、でも一つだけ教えてあげるー」
「お、おい」
何故か焦るセブルスを無視してダモクレスはキラの耳元でこそっと打ち明ける。
――――勝負パンツだよ――――
その瞬間、キラはこらえきれずに噴き出した。
彼女の頭には、祖父が気合いを入れるときにいつも身に着ける赤ふんどしが浮かんだのだ。
「せ、せぶるすが…あ、あかふん…!!!」
ひぃひぃと息も絶え絶えのキラに、耳打ちしたダモクレスも目を丸くする。
「お、お前一体何を言ったんだ…!」
「いや…勝負パンツって言っただけなんだけどー。ちょっと笑うかな、くらいだったのに。こんなに笑ってくれるなんて」
想像以上の大爆笑で戸惑ってしまう。
「他にはさ、媚薬とか潤滑剤とかぶるぶる杖カバーとかもあったんだけど、さすがに言っちゃダメかなってー」
ぶるぶる杖カバーとは、自身の持っている杖に被せて呪文を唱えると振動する大人の玩具だ。
「……」
半眼になってダモクレスを見れば、彼は悪びれず肩を竦めた。
「媚薬と潤滑剤は作って欲しいって依頼があるんだもーん。だからプレゼントとしては悪くないってー」
「いらん」
「ちぇー」
「おい…いつまで笑ってるんだ…」
ちら、とセブルスを見てはお腹を抱えて笑うキラ。
彼女の頭の中では、日に一切当たらないため真っ白な肌のセブルスが赤ふんどし1枚身に着けた状態で海岸に仁王立ちしていた。
(ダメだ…思い出し笑いしちゃう…)
もうこれ以上セブルスを見ると酸欠になってしまうと、キラは温室を後にした。
パーティーではあんなことがあったから、会うのは気まずいかと思ったけれどダモクレスのおかげでなんとかなった。
今は違う意味で気まずいというか、自分が呼吸困難になるので逃げてくるしかなかったが。