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【HP】月下美人

第10章 見つめるその先


「もうすぐセブルスの誕生日だねー。何が欲しい?」
「えっ? いつですか?」
「1月9日だよー」
「い、一週間もないじゃないですか…! もっと早く教えて下さいよ!!」
「そんなこと言われたってー。セブルスってばクリスマスの間中ずーっと死んだ魚みたいな顔してたんだもーん」
「それは知りませんけど、ダモクレスは元気だったじゃないですか」

 クリスマス休暇が明けてすぐの日曜、キラはいつものように温室に来ていた。
 さすが温室、ぽかぽかとしていて冷たくなった鼻先もすぐに温もりそうだった。
 1月2日に授業が始まってから、キラは初めてセブルスに会うこととなったのだが、休暇中ダモクレスにはほぼ毎日、大広間や温室で会っていた。

「…うるさい。気が散る」

 手元の本から顔も上げず、セブルスは素っ気無い。
「ぶーぶー」
 頬を膨らませ、唇を尖がらせるダモクレスにキラは思わず笑ってしまう。
「なんですかその顔」
「えー、可愛くなーい?」
「全くです」
「全くだ」
「えっそこハモっちゃうのー」

 そんなやり取りが久しぶりでとても楽しい。
 キラがいつもよりはしゃいでいるのを感じて、ダモクレスはにこにこしながら彼女の頭を撫でた。

「今日はすっごく楽しそうだねー」
「え?」
「俺と二人のときはこんなに笑ってなかったしー。セブルスがいると嬉しい?」
「はい!」
「即答だー。ひどーい!」
「だ、だって!二人より三人の方が楽しいじゃないですか!」
「ふーん。だって、セブルス」
「……」
「無視した! セブルスに無視されたー」

 うわーん!とわざとらしい泣き真似をしてみれば、冷たい視線がダモクレスに突き刺さる。
 その様子にキラはけらけらと笑い転げた。
 
「キラも笑ってないでさー。セブルスの欲しいもの聞き出そうよー」
「うるさい。大体、リクエストしたところでその通りのものを持ってきたことないだろう」
「うん、まぁね」
「えぇー?!」
 えっへんと胸を張るかのような返事に、キラは驚いた。 
「だって! セブルスってば本だとか、薬草だとか、そんなのばっかりなんだよー。つまんないよー」
「…お前は一体何を求めてるんだ」
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