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悪色に染まる

第1章 出会い


「………お母さんは………ここに眠ってるの。お父さんも。」

「…………………………」

「お父さんは九尾っていうのから守るために死んじゃって、その後私を生んで、お母さんは死んじゃったって聞いたの。」

するとその人は少し驚いた顔をしてそして悲しそうな顔になった。

「………おじさんも何か悲しいことあったんだね。大丈夫?」

「……………………俺は………」

「うん」

その人は困惑した顔で私を見る。なんだか泣きそうな顔だった。私は手を引く。

「あのね今のお母さんが言ってた。悲しい時の涙は我慢するときついんだって。だから涙は我慢しない方がいいんだって。今ここには私しかいないし……その…………そうだ!私の秘密の場所連れていってあげる!でね………えっと………その………」

言葉が続かない。だから何も言わず手を引いた。私の目的の場所に。

「ほら!」

そこは墓地から少し離れた桜がいっぱい咲いているところだった。湖もある。ここは少し複雑な道となっていて滅多に人が通らない。というか、知っている人は少ない……と思う。私は何かあったときいつもここに来ていた。

「おじさんにだけ教えてあげる!綺麗でしょ?だからね………泣いていいんだよ?」

先程から無言のおじさんの顔を見ようと見上げる。すると私の頬に水が落ちてきたのに気づいた。

☆☆☆☆☆☆☆☆

「だから………泣いていいんだよ」

この場所があるなんて毎日通っている俺でも知らなかった。綺麗な桜、透き通った湖、それにこの子の言葉は今の俺には眩しかった。

「……」

ふとその子を見ると、満足そうに微笑んでいた。その顔はやけに大人びていて俺は少し戸惑った。

「…………え?」

そして俺は自分が涙を流していることに気づいた。涙を流したのなんて親父が死んだ時以来だったし、しかも人前で、しかも幼い子供の前で泣いたのなんか初めてだった。

「なんで…俺……」

涙はとめどなく溢れた。俺は耐えきれず嗚咽をもらした。

「大丈夫だよ。天国で見守ってくれてるから。」

その子は俺の手を優しく握った。そしてにっこり笑い、靴を脱ぎ湖で戯れる。あの歳で気を使ってくれたのだろうか。そして俺は年甲斐もなく大泣きしてしまった。

☆☆☆☆☆☆☆☆

おじさんは今まで溜め込んでいたのを吐き出すように泣いた。私は空を見た。空はただ青く晴れ渡っていた。
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