第13章 【第十二章】キセキの領主 =黄瀬=(憤り)
「姫様~!姫様~!」
先程の老婆の声がすぐ近くでする。
「お願い、隠して!」
何故か咄嗟に、俺は彼女を自分のマントの中に隠した。
しばらくして、探している声が聞こえなくなると、ゴソゴソとマントが動く。
「行っちゃったっスよ。出てきてもいいっス。」
マントを開けると、姫は少し笑っていて、なんだ?と首を傾げる。
「あなたのマントの中も、潮の匂いがするわ。目を閉じると、波の音まで聞こえるよう。
まるで貝殻の中にいるみたいだった。」
そう言って笑う彼女に、俺は何故か顔を赤くして見いっていると、彼女は立ち上がり、ドレスの裾を広げ、お辞儀をした。
「私は、美桜。帝光大国第一王女です。海常の新しい領主様、以後お見知りおきください。」
俺は立ち上がり、膝を着く。
「…俺は、海常の領主、黄瀬涼太っス。」
「ふふ。これで全員、揃ったわね。全領地の新しい領主たち。」
姫は笑って、口許を細い指が覆う。
俺はそんな彼女を見上げてから、立ち上がった。
「新しい領主?」
「父から聞いていない?全領主の世代交代よ。あなたの他に、新しい領主が4人いる。今度みんなで会いましょうね。きっと楽しいわよ。」