第13章 【第十二章】キセキの領主 =黄瀬=(憤り)
[黄瀬]
俺は元々島国育ちで、領地:海常の一民だった。
そんな俺を、独り身の元海常領主が、後継者として養子にしてくれたのだった。
俺は、彼の後を継ぎ、俺は海常の領主になった。
元海常の領主に連れられ、初めて領地以外の地を踏む。
海常の島国にはない人々の行き交いに、俺は馬車の中から、生き生きと見ていると、元海常領主:オヤジは、ニヤッと笑い、頭をガシガシと撫でてくれた。
「……でっけーーっスね……。」
馬車から降りると、領地の城より大きい城が聳え立っていた。
俺は、ポーーーーっと見上げていると、オヤジが行くぞっ!と背中を叩いた。
帝光大国の国王に、初めて謁見した後、俺は一人で城の中を探検していた。
別に迷子になった訳じゃないのに、やたらとメイド等に声を掛けられる。
俺は、そつなく挨拶しては、マントをたなびかせ、廊下を歩いていた。
すると
「姫様~!姫様~!」
一人の恰幅のいい老婆が、廊下で大声で、叫んでいた。
『姫?』
俺は、姫という言葉に眉を上げた。
『姫ってことは、この国のお姫様ってことっスか。』
何となく面白く思って、近くの窓から外を見ると、木の影に隠れるピンクの布が見えた。
俺は、2階の窓から木に飛び移り、その布がある方を見た。
すると、
女の子が俺を見上げ、驚きに目を見開いていた。
「あんたが、姫っスか?」
「シーーーィッ!!」
俺は木の上から、その女の子に話しかけると、女の子は口に人差し指をつけて、体を丸めた。
その仕草が可愛くて、木の枝から飛び降り、彼女の横にしゃがむ。
「何してるんスか?」
「ばーやから逃げてるの。……色々な教育を受けるのは、姫としての義務。
姫の義務なのは、分かってる。だけど……少しだけ、一人になりたい時もあるの……。」
姫は、近くにある葉っぱを指で弄びながら、悲しい顔をしていた。
「姫って大変なんスね。」
俺は軽い同情心で、姫の頭を撫でると、彼女は顔を上げて、俺の腕をクンクン嗅ぎ始めた。
「な、なんスか?」
「…………あなた、潮の匂いがする。」
姫は顔を上げ、俺の目を覗き込んだ。
「……あなた、海常の新しい領主様ね?」
身を乗り出して、俺に密着する姫に、何故か俺がタジタジすると。