第5章 【第四章】君を助ける為に…
「…残る…?何を言ってるんですか?」
耳を疑う言葉に、黒子は目を見開き美桜を見た。
「私は、帝光大国の第一王女。国民と国王を捨てて、自分だけ逃げるなんて出来ない。」
「…美桜姫、聞いてください。これは…」
「駄目なものは駄目。……テツヤ、最後に貴方に会えて良かった。」
自己完結して、まったく聞く耳を持ってくれない美桜に苛立ち、黒子は勢いに任せ、噛みつくようなキスをした。
「んぅっ!……んっ!」
美桜は驚いて目を見開き、黒子から距離を取ろうともがくが、酸欠で徐々にぐったりして力が抜けていく。
美桜の腰を、鉄格子の隙間から腕を通し抱き止めながら、耳元で囁いた。
「…駄目なんです…。僕は“美桜”がいないとだめなんです。」
「…え…?…」
「僕は貴女に生きて欲しい。」
黒子の心からの言葉に、美桜は言葉を失う。
「……今、そこから出してあげますから、そしたら、逃げます。…桃井さんも心配してますよ。」
そう言うと黒子は急いで道具を取りだし、解錠しようとすると…
「逃がすわけにはいかないんですよ。」
落ち着いた男の声に、黒子は驚き振り返った。