第1章 【第一章】静かなる崩壊
「敦、征十郎。」
振り返ると、赤司と紫原が並んで立っていた。
「久しぶりだね、美桜。」
「そうね、征十郎。お父様…叔父様は元気?」
「うん、元気だよ。今、美桜のお父様、国王に謁見してるんじゃないかな。」
「そう…」
赤司と私は、従兄弟同士。父と叔母が兄弟だったのだ。
しかし、赤司のお母様(叔母様)は、征十郎を生んですぐに亡くなった。
「美桜は、…俺の母に似てるらしいよ。」
「え?叔母様に?」
「最近は特に似てるって、父が言っていたから。」
「…そう…」
私は、赤司の父、叔父様のことが苦手だった。
幼い頃、小さい征十郎と共に謁見に来た叔父様の目を今でも覚えている。
あれは
人を殺める目…
あれ以来、赤司家は城に入らなかった。
何故だか、その時の記憶は曖昧で思い出せない。
あの目以外は。
「美桜ちん、テーブルの料理食べちゃったぁ。もっとない?お菓子とかぁ。」
「え?!沢山用意したのに……仕方ないなぁー…」
赤司との話は私を少し複雑な気持ちにさせたが、紫原が和ませてくれた。知らずに入っていた肩の力が抜けていく。
「美桜姫、そろそろお時間です。皆さんも、領主として、バルコニーに御上がりください。」
黒子に言われ、創立祭の締めくくりである王族挨拶の式典に向かった。
王族は、メインバルコニーに立ち、領主は、両サイドの一段低い位置にあるバルコニーに立つ。
『あ、叔父様は領主席にいるのか…』
叔父様は王族にあたる、しかしメインバルコニーには登らず、領主席に座っていた。
国王である父が国民に挨拶をし、手を振る。
それにならい、王族・領主も国民に手を振る。
式典が終わろうとした、その時…
「うっ……うぅ………!」
国王が胸を押さえて、ゆっくりと倒れ込んだ。
「お父様っ!お父様っ!」
もう、国民が見てるとか、式典とか関係なく動揺し、父に駆け寄り抱き締める。
「誰か…!誰か来てぇーーーーーーー!」
私の絶叫は、創立祭の空に響いた。