第2章 【第二章】邪な想いと真心の想い
「ここに…残る…?」
桃井が、軽く笑顔で美桜に話すので、戸惑い青峰を見るが、彼も軽く頷いた。
「こいつ、置いてくから、好き勝手使え。」
ぶっきらぼうな言葉と、さつきの頭を軽く叩く青峰を見つめると、
「…大丈夫だ、こいつがいるから。…心配すんな。」
桃井は、そんな青峰の態度に腹が立ち、青峰にパンチを繰り出すが、あまり効かないのか、青峰は笑っている。
「じゃ、さつき頼んだぞ。…じゃな、美桜。」
黒い馬に跨がり騎乗すると、上から拳が差し出された。
さつきと美桜、黒子に拳を付いて、城を出ていった。
「いっちゃった…。」
そう美桜が呟くと、桃井が美桜の肩に手を回す。
「大丈夫、美桜の一番近くには、あたしとテツくんがいるんだから。」
「うん。」
桃井の言葉に嬉しさが込み上げていると、
「赤司くん。」
黒子は城のバルコニーから、見下ろしている赤司を見つけ警戒の色を強めた。
「…征十郎…」
「赤司くん…」
赤司に与えれた部屋の扉をノックすると、涼やかな「はい、どうぞ。」と言う声が聞こえ、中に通される。
日当たりのいい部屋で、赤司は、備え付けの机で何か書き物をしていた。
「征十郎。」
「おや、美桜姫だけかい?桃井と黒子は?」
書き物を終えて、赤司は立ち上がり美桜に近づいていく。
「………叔父様…なの?」
恐ろしい思いが頭から離れなく、気がついたら赤司に呟いていた。
「…何のことについてかな?…」
そう言って、さっきまで書いていた物を美桜の手に握らせる。
《黙って受けとり、自室で読め》と、達筆な字で書いてある手紙を黙って受けとり、小さく頷く。
「父上は、ああいう人だ。」
そう言って、部屋から出て行った。
残されたのは、まるで金縛りにあったように動けないでいる美桜と、赤司が残した手紙だけ。
自室に戻り、鍵を掛ける。
黒子と桃井が見守る中、赤司が残した手紙を読みはじめて、美桜は言葉を失い、手から手紙が滑り落ちた。