第2章 【第二章】邪な想いと真心の想い
「大ちゃんっ!何で帰るなんて言うのよぉ!…今、美桜姫がどんなに心細いか……。分かってるのっ?!」
青峰は、自分に与えられた部屋の前で、桃井がウロウロしているのを見つけた。
玉座の間であった出来事を解摘まんで話すと、桃井に腕を掴まれ、強引に部屋に連れ込まれ、お説教中なのである。
「何で庇ってあげれないのよ!!…もぉー…美桜姫…大丈夫なのかな…」
眉を下げ、心配している桃井を背中に感じながら青峰は窓の外を見ると、紫原が一足先に帰ろうとしている。
美桜が、外に出て紫原と話をしていると、突然紫原の手が美桜姫の頭を撫でた。
美桜は、また何か話すと、紫原が馬車に乗り込んだ。
そして、紫原が乗った馬車が城門を越え見えなくなるまで手を振っていた。
「おい、さつき。」
さつきは、目を見開き瞬きをした後、「分かった」と頷いたのだった。
その頃、美桜は紫原に言われた言葉を思い出していた。
『美桜ちん、よしよし。』
『え?ど、どうしたの?』
『んーーー、美桜ちんはぁ、昨日お父さん倒れてぇ、今日は、赤ちんのお父さんになんか言われてたでしょ…だから…』
優しい大きな手が美桜の頭を包んでくれて、美桜は、笑顔になり紫原を見上げた。
『敦、私頑張るからね。』
『んー、じゃね。』
そう言って、紫原は自分の領地に帰って行った。
紫原の馬車を見送っていると、後ろから女性のキャッキャッする声が聞こえてきた。
「涼太。」
振り返ると、黄瀬がメイドや貴族の女の子に囲まれて笑っていたのだった。
「美桜っち。」
「もう城に来る度に囲まれちゃって…」
苦笑しながら、涼太を見ると突然抱き締められた。
「り、涼太っ?!」
「…俺、バカだから美桜っちを100%助けらんない…でも、心配してるっス。美桜っち頑張れ!」
「うん。」
「何かあったら、俺助けに行くから言うスよ?」
抱き締められた腕が離れ、顔を覗き込まれた。
「ありがとう、涼太。…心強いよ…。」
微笑んで黄瀬を乗せた馬車を見送る。
紫原と黄瀬に優しさと勇気をもらい、胸が暖かくなると、メイドに「緑間様がお待ちです。」と伝言を受ける。