第11章 11章
『じゃあさ、徹先輩はなにしにウチに来たの?』
及「ん〜、熱でたっていうからそれのお見舞い」
『え、ありがとう』
ホントは熱出てないのなんてバレてるんだろうけど
普通に嬉しかった
『先輩たちが引退しないってわかったから
明日からはバリバリ部活頑張るよ!』
及「うん
今度は行こうね、オレンジコート」
『オレンジコート?』
及「あぁ、うん
オレンジコートって言うのはね、
次の春高っていう大会の全国大会が開かれる場所だよ」
『全国……』
及「うん、だから行こう、オレンジコート」
『うん!!』
次は絶対、全国行こうねみんな
及「それとね――
俺、彼女ができた」
……え?
徹先輩に、彼女?
及「でも――」
聞きたくない聞きたくない聞きたくない
なんでこんな感情になるのかわからないけど
聞きたくない
それだけはわかった
――ガシャン――
テーブルの上にあったコップを倒すと割れた
及「大丈夫!?」
『あ〜うん、片付けなきゃだから帰ってくれない?
それに彼女に怒られちゃうよ、家に女子と二人なんて
でもおめでとう徹先輩、お幸せに』
そう言ったわたしは
きっと今までのどれよりも作り笑顔だったけど
笑わないよりいいだろう
及「まって奈々ちゃん、聞いて!
でも俺――」
『嫌だ!もう帰ってよ!何も聞きたくない!!』
及「…じゃあ明日落ち着いたら俺の話聞いて」
そう言って帰っていく徹先輩
その言葉を無視する、聞く気なんてない
なんていうつもりなんだろう
彼女のいいところでも言うつもりなんだろうか
ほんとそんなの迷惑だからやめて欲しい
徹先輩に彼女
それだけでこんなに傷ついてるわたしがいて
もう言い訳はできない
わたしは徹先輩が好き
………ちがう
あっけなくわたしの恋は終わったわけで
これ以上好きでいたって彼女いるのに迷惑がかかるよね
だからこの気持ちに蓋をするしかわたしに道はない
わたしは徹先輩が好きだったんだ、今はなんとも思ってない
そう言い聞かせるしかなくて
さっきの徹先輩の話をちゃんと聞いていれば
あんなに後悔することもなかったのに
このときのわたしには、そんなこと微塵も気づかなかった