第20章 合同練習
「.....こんな所で何してるんですか」
『....べーつに,もて男くんこそどうしてここに?』
「いえ、別に」
ん????あれ、懐かしいな、記憶を無くした時の私だ
あとつっきー?つっきーだよね??あれ???んんんん??
あの時の私はひとりで居たくてこそこそと逃げてたんだっけ、懐かしい
屋上に行ったり図書室に行ったり、今居る場所は校舎裏だ
あそこ丁度日陰だし、人が来ないし良かったんだよね
「それ....どうしたんですか」
『ん?あー、クーポン券だけど』
指を指された先には、家のポストに入っていたケーキ屋さんのクーポン券だ
ひらひらとクーポン券を扇ぐように動かすもじっとまるで食い入る様にクーポンを追い視線が動く
『...?これ良かったらいる?借りたCDのお礼ってことで良かったら受け取ってよ』
「...!しょうがないから貰ってあげます」
何処か嬉しそうな表情を一瞬するもすんと真顔になっては受け取ってくれる
『....甘いもの好きなの?』
「は?そんな訳ないでしょ」
『ふーん....じゃ、私行くは』
よっこいしょと声を出しては、フードを深く被りなおして立ち上がり、月島が立っている方向に向かうとすれ違う様に歩く
「...あの」
すると、ぐんと腕を引かれては転びそうになるとフードが落ちて目の前に月島の顔が
恥ずかしがる素振りも見せずじっと此方を見てくる
ゆらゆらとまるで月の光みたいな、でも何処か曇っている瞳がこちらを射抜く
『....綺麗だね、でも』
ふと、言葉が漏れてしまった
瞳の中、夜でもないのに月が見える様で...だけど、綺麗な暖かい光を何故か遮るように黒い雲が覆い被さって居るようにも見えた
「え?」
『....月は見えると思う?』
「は?見えないに決まってます」
眉を寄せては何を言ってるんだという顔をされるも、昼だから見えないだろと言葉を述べられる
『いつか見てみたいね...?』
「...はぁ、」
『お陰で転ばずに済んだ、有難う、じゃあね、蛍くん』
そっと何処か怪訝な表情でこちらをじっと見詰めてくる月島から離れては、御礼を述べる
「なんで僕の名前」
後ろから声を掛けられるもひらひらと手を振っては月島から遠のいていく
すると遠くから誰かから呼ばれているような、揺らされている様な感覚におちいる