第18章 懐かしの匂い
明くる日、夜の月の光を頼りに日課になってしまったこの場所を訪れても賑やかな声は聞こえてません
「...居るんでしょ?」
猫の声が静かな森の中、よく響き渡ります
「ちょっと...ねえ、ったら!」
「わわ、そんな大声出さなくても」
「....どこ行ってたのさ、また姿を表さないつもり?」
兎は何処か慌てたように困ったように言葉を紡ぎます、満月の赤い光が照らす姿を見て以来姿を見ていなかったのです
「....んー、っとね、今日もね、だめなのです!だからここからこの華麗なる私の声を聞いて下され」
「....はあ、もういいよ、それなら」
「あ、あのね、今日でもう「お話は今日はないの?」...あー!そう、今日は残念ながら」
「じゃあ、今日は帰「わわわ!待って待って、今日はここで寝ようよ!ほら、そこの木の根元なんか良い場所だと思うんだ」わかったわかったから」
「おやすみ」
「ふふ、お休み、君に会えて良かった」
「え...」
辺り一面が花弁に囲まれます
猫が慌てて起き目を開けるとそこには羽根のような柔らかい花弁が猫の周りを取り囲んでいます
「...え、ちょ、っと」
猫の掠れた声が静かな森の中やけに大きく聞こえました
満月の赤い月の光が1本の木を照らします
ひらひら、ひらひら
___ありがとう____
「君、だったんだね、やっと.......こちらこそありがとう」
猫の鼻の上に最後の1枚の花弁が舞い降りてきました
その花弁は珍しく周りの花弁とは違い、きらきらと金色に光輝いて居ました
猫は朝目覚めるとふらふらとまた何処かに、まるで何かを探す様に遠くへ遠くへと足をすすめましたとさ
おしまい」