第18章 懐かしの匂い
次の日
猫はふらふらとまた歩いていると、昨日の場所に辿り着きました
「...!来てくれたのね!」
「.....間違えた」
「え!ちょっと待って、あー、いい事教えてあげる!」
「なに..?」
「んーっと、んーっと、あ!お話、してあげる!凄く面白いの!」
「良いよ、そんなの」
「いいから!聞いてってばー!!!」
「あー!わかったから」
「おほん、ではでは」
猫は不機嫌そうに眉を寄せるも、透き通った何処か優しい声にいつの間にか聞き入っては話を聞いていました
「ちょーっと!ちょっとってば!」
「いた、いいたいって!」
猫はいつの間にか寝てしまっていたのかすっかり暗くなってしまいました、何かに耳を引っ張られたと視界をそちらに向けると
「...君、兎だったの?」
「え!?あー!そう!ふふん、可愛い?」
そこには小さな兎が居ました、その兎は何処か慌てたように駆け回ります
満月の夜、うっすらと赤みがかった色をしている月の光が兎を照らします
兎が月の光に照らされるときらきらと毛並みが金色に光っている様です
「....はぁ」
「え!?ため息!?良くないなー...幸せ逃げちゃうよ?」
「...生きられればそれで良い」
「んー???勿体ないなあ、その瞳で何でも見れて体験出来て、まだまだたーくさん世の中には楽しいことや嬉しいことがあるのに」
「空気、食べ物、寝床、それがあれば必要ない」
「そっか」
「.....でもいつかは君とどこかに遊びに行くのもいいのかもね」
「....!!!そう、だね」
今まで間近で見たことのなかった瞳が、じっと猫を見つめては驚いたように瞳を丸め心底嬉しそうにだけど瞳を揺らしては眉を下げ言葉を述べます
「....今日もあるんでしょ?お話が」
「...!勿論、そうだなあ、あれはある日の_」
猫はゆらゆら、ゆらゆら、と気持ち良さそうに声に耳を傾けては瞳を閉じます
やわらかい羽毛のような、何処か懐かしい感触がしてはまた夢の中に誘われていきました
もう猫は二度と来るかと目覚めた時思うのですが、朝や昼は何故が賑やかな声は聞こえず、寝ているのだと思いこちらも声を掛けないのでふらふらと食べ物を探しに出かけます
いつの間にか、次の日もそのまた次の日も、足は無意識にこの場所を訪れていました