第8章 blue対black
大王様から無事逃げ切れたよ(拍手)
あ,でも厄介な時に来ちゃったみたいだね
「「キャー!!及川さーん!!」」
はい,大魔王様登場だ
やめてくれ,来ないでくれと心の中は大騒ぎ
顔はしんだ様に真顔だと思うけど
「飛雄ちゃん久しぶり~。元気に王様やってる?」
目線合わせないないない
私は存在していません存在してないのです(言い聞かせ)
「俺、サーブとブロックはあの人を見て覚えました。」
「え!」
「実力は相当です」
「!!?」
「けど,今は試合に集中しろ。最終セット絶対取るぞ!」
「お,おうよ!」
「田中さん威嚇やめて!」
及川さんはコートに入る準備を入念しチェックしている
あー,あの人出るんだ
俯いてるけどなんか凄い視線がくるんだよね
「おい,大丈夫か?」
『菅原さん大丈夫ですよ,いつも通りですよ』
「(ねえ,何で忘れちゃったのさ..あの笑顔はもう見れないってこと?ねえ。こっちを見てよ)」
及川さんの意思を伝えるかのようにピーっと笛が吹かれた
及川さんがコートの中へ
ボールを回転させている及川さんをつい見ると視線が混じり合う
あー,何でそんな表情するわけ?
一瞬の隙に見せた表情,また脳裏に刻み込まれる
「いくら攻撃力が高くてもさ,その'攻撃'まで繋げなきゃ意味ないんだよ?」
エンドラインに立ち,及川さんは意味深な言葉を発す
そしてボールを持った片手でゆっくりと人差し指をさした
「'ねえ,ももこ..思い出して'」
声を発する事無く妖艶にそして悲しそうに微笑んだ表情につい見入ってしまう
ああ,この人も前の私を見つけようとしているのかな
前の私___
意識が何処か朧げな中,ボールが高くあがり,物凄い音と共に烏野のコートに近づく
月島くんの腕にボールは当たり,及川さんの凄まじさは目を見張るものだった
だけど,あの速攻のおかげで何とか勝っちゃったみたいだよ
えーっと...え?見てた..よ,うん,多分
..おめでとうございます?