あなたの声が聞きたくて【another story】
第4章 花巻貴大
かつて“コート上の舞姫”と謳われたそのプレーは数年経った今でも健在で、
観客席で身体の大きさに似合わないバレーボールを抱えた女の子と男の子二人ががキラキラした目で試合を見つめていた。
優達の小さい頃もあんなだったのだろうか。
「高崎選手すごいっ!」
「おれもあんなサーブ打ちたい!」
「たのしそー!」
優が褒められるたび、俺が褒められているような感覚になる。
あの子達もバレーを始めるのだろうか。
そしていつかこの舞台に立つのだろうか。
そんなことを考えていたら今までよりも何倍も大きな歓声が湧き立った。
「ん?」
及「ちょっマッキー!勝ったんだよ!?何ぼーっとしてんの!?」
「ウソだろ、、、。」
俺の見ていない間に試合は終わってしまっていた。
、、、これ優にバレたらやばい気がする。
いや、確実にシメられるな。
とりあえず今は夢が叶えられた事を喜びつつ、なにか聞かれた時の対処法を考えておこう。
表彰式にインタビューと、疲れている選手たちに待ち受けるこの後の仕事。
世界で活躍する者には避けては通れない道だろう。
チームで来ていた及川たちと別れ、予め教えてもらっていた優の泊まるホテルへ一足先に向かった。
この後の一世一代の大仕事のために。