あなたの声が聞きたくて【another story】
第11章 澤村大地
優が東京へ出発する日、駅に見送りに行くと青城のメンバーに加え他校の見覚えのある奴らまで居て、分かってはいたものの肩を落とさずにはいられなかった。
「大地くん、」
人だかりの中から飛び出てきた小柄な身体を受け止めるとふわり、優しい匂いがした。
「来てくれたんだね!」
「昨日も見送り行くって言ったでしょーが」
「へへっ、すごく嬉しい!ありがとう!」
俺のコートに顔を埋める優の髪をくしゃりと撫でて抱き締める。
次に彼女に触れられるのはいつになるだろうか。
互いに忙しい日々を過ごす事は分かりきっていて、皆目検討すらつかない。
それでも、俺はきっとこの感触を忘れない。
「胸張ってお前の隣に立てるように頑張るから、無理だけはするなよ。」
「無茶はするけど無理はしないよ。約束。」
えへへ、と緩んだ頬に唇を寄せ優にだけ聞こえるように囁く。
「大好きだ。」