あなたの声が聞きたくて【another story】
第11章 澤村大地
優は何度もありがとう、と笑ってくれた。
瞳に滲んだ涙は悲しいものでは無いようだったので良しとしよう。
「俺ん家に行こう?」
差し出した手は優しく握られて、二人で体温を分け合った。
帰り道にはたくさんの『これから』の話をして
笑って、笑われて
たくさんの愛おしいを感じた。
家に帰ると父さんと母さんに優のことを「彼女です」って紹介して、ほんの少し揶揄われた。
夏の時と同じように濡れた髪を乾かしてあげて、
今日何10回目かの愛おしいを感じた時
彼女の瞳に吸い込まれるようにキスをした。
初めてのキスはレモン味なんてよう言われるけど
「なんて言うか、ミント?」
「歯磨き粉の味だね」