あなたの声が聞きたくて【another story】
第11章 澤村大地
瞬く間に時間はすぎて、彼女とのデートの日
普段の部活の時と違った可愛らしい服を身に纏い、仄かに頬を染めた彼女がそこにいて、そのすべてが俺の為だと思うと嬉しさで舞い上がりそうになった。
「行こうか。」
「うん。」
手を差し伸べるとその細い指が俺の節くれた指に絡み合う。
「冷え性?」
「少しだけ。冷たい?」
「俺、体温高いから平気だよ。」
彼女の指が少しでも温まるようにぎゅっと手を握った。
映画のタイトルは道宮たちが観たいと話をしていた恋愛もの。俺には少し退屈そうだ。
「大丈夫、きっとこの映画好きだよ。」
彼女の言葉に微笑みを返して大人しく映画を観ると、想像以上に興味の湧くストーリーに思わず見入ってしまった。
「ほらね、好きだったでしょ?」
「うん、すごく気に入った。」
ふふ、と笑う彼女がとても可愛くて愛おしいと感じた。
ぽかぽか、心が暖かくなる。