あなたの声が聞きたくて【another story】
第9章 岩泉一【番外編】4
鼻歌を歌いながら店の中を歩いていると、お豆腐コーナーで顎に手を当てながら佇む彼の姿が。
「揚げ出し豆腐食べたいの?」
「あ?あー…いいのか?」
「いいよ。放ったらかしにしちゃったお詫び。」
「さんきゅ、」
ちょこん、と尖った唇がかわいい。
お豆腐をカゴに入れるとそのカゴをはじめの手が奪う。
「持つ。」
「ありがと、」
空いたほうの手をはじめの手に摺り寄せて指先を絡めた。
「早く帰って甘やかしてね」
「おう。早く帰んべ。」
急かすようにはじめは私の手を引いてレジへと歩き出した。
「あのー、肝心の麺まだ買ってないんだけど」
「あ、」