あなたの声が聞きたくて【another story】
第9章 岩泉一【番外編】4
さほど遠くない会社への道のりを並んで歩く。
歩幅の違う2人が離れる事なく歩けるのは、はじめが私の歩調に合わせてくれるから。
結婚しても変わらない気遣いに頬が緩む。
「なに笑ってんだよ。」
「何でもないよ」
それでも笑う私の頭をぐしゃぐしゃと撫で回す。
「キスしたくなっからヤメロ。」
「お家帰ったらねー」
「言ったな?」
「言ったよ?」
その言葉忘れんなよ、そう言って今度は頭をポンと撫で、何事も無かったように歩き出した。
「男前め。むかつく。」
何年経ってもほんと変わらないんだから。
「そのむかつく男に惚れたのはお前だろ?」
「あら、はじめが先に私に惚れたんでしょ?」
子供のような言い合いもなにも変わらない。