あなたの声が聞きたくて【another story】
第8章 国見英
先ほどとは逆に、今度は俺の方が戸惑いを隠せない。何が起こってんの?
「英がそんなに悩んでるって知らなくて…本当にごめんなさい。」
違う。
俺は優さんに謝らせたいわけじゃない
「ごめん…ごめんね…」
口を開いて、閉じて
無駄に酸素を消費するばかりで、俺の声帯は何も発してくれない。
罪悪感に溺れて窒息死しそうだ。
俺の方こそごめんなさい、なんて在り来りな言葉を口にして、暗くなった帰り道を鉛がくっついたみたいに重い足取りで歩いた。
優さんも俺も、あの後口を開くことはなかった。
ほんと俺ダッサ。