あなたの声が聞きたくて【another story】
第8章 国見英
練習中、溝口コーチに怒られない程度に力を抜き、頭の端で優さんのことを考えてた。
隣のコートのミニゲームで舞うようにスパイクを決める彼女。
コートの中で誰よりも輝きを放って駆け回る。
何本も何本もトスを呼んで、打って、ブロックしてレシーブして…。
俺とは真逆なヒト。
本当なら(悔しいけど)及川さんとか岩泉さんとか、ほかの3年生とか、彼女の隣に立つに相応しい人はたくさん居たはずで
なんで俺なんだろうって思ったりもした。
でも、このチャンスを逃がすつもりなんてこれっぽっちもない。
「優さん。」
「お、英。おつかれ!」
休憩に入った彼女に近づき声をかける。
「今日、一緒に帰りましょう?」
「うん、いいよ。」
勘のいい彼女はきっと気づいただろう。
俺が返事をするって