あなたの声が聞きたくて【another story】
第7章 岩泉一【番外編】3
親族紹介などはもう紹介するところがないほど知っているので、省かせてもらった。
仲人さんも遠慮した。
あと残すは…
「そろそろお時間になりますよ」
扉の向こうからかけられた声に返事をし、移動の準備を始めた。
「優。」
歳をとって、少し低くなったお母さんの声
「なに?お母さん。」
「私にベールダウンをさせてくれる?」
「当たり前だよ。こちらこそ、お願いします」
ベールダウンは母親から娘への最後のプレゼントって意味があるってスタッフさんから聞いてたから、言われなくてもやってもらうつもりだった。
ヒールで高くなった目線をお母さんにあわせるように少し屈んで、頭を下げた。
「ありがとう…」
薄いベールが目の前にかけられて、お母さんと目が合った。
「幸せになってね。」
「うんっ。絶対幸せになる…っ。」
零れそうになった涙を必死に堪えた。