あなたの声が聞きたくて【another story】
第6章 松川一静
アナウンサーに呼ばれて試合直後のインタビューを受ける及川の姿は高校の時のあのふざけた姿はなく、とっても頼もしくて驚いた。
当然といえば当然なんだろうけど。
『見事掴んだ優勝ですが、今の正直な感想などあればお願いします。』
そう言ってマイクを向けられた及川は、俺達のいる方を見て小さく笑った。
及「すごく、嬉しいです。子供の頃テレビで初めてバレーを見て、二人の幼なじみと一緒にバレーを始めて、ずっと一緒にやって来ました。」
隣を見れば、せっかく引っ込んだはずの涙をポロポロと零す優がいた。
「今泣くとこ?」
優「いろいろ思いだじだら泣げでぎだ。」
うん最早まともに喋れてすらいない。
及「その二人と約束したんです。“一緒に頂点に立とう”って。、、、中学、高校では大きな壁に阻まれて、バレーなんかって思った時もあったけれど、その二人が、大切な仲間が居てくれたおかげで、今もこうしてユニホームを着てプレーを出来ています。」
脳裏に浮かぶのはただひたすら努力を重ねる及川の姿。
なんだかんだ言ってあいつは人の何倍も努力していた。だから俺達はアイツについて行った。
及「岩ちゃん、優。約束、やっと守れたね。そしてみんな、本当にありがとう。」
そう言って締めくくり、深々とお辞儀をした及川に会場から盛大では収まりきらない程の拍手が送られた。
インタビューから解放された及川は岩泉に身体を支えられていた。
どうやら限界だったらしい。
それでも気丈に振舞う姿はさすが俺らのキャプテン。