あなたの声が聞きたくて【another story】
第6章 松川一静
気づけばフルセットまで持ち込まれたこの試合。
フルセットには全くいい思い出がない。
「及川疲れてね?」
優「うん、、、膝危ないかも、、、」
心配そうな面持ちで見つめる先には貼り付け笑顔がバレバレな及川。
あ、岩泉にぶん殴られた。
今頃「痛いよ岩ちゃん!」とか言ってそう。
岩泉が及川に何か言って、選手も及川のこと見て、、、
「信じてるぞ、キャプテン」
そう言っていた。
あの頃と同じ言葉を。
あの頃と同じ言葉キャプテンマークを背負ったあいつに。
「俺もあそこ行きてえ」
叶いもしないそんな願いが零れた。
優「わたしも。」
汗の滲み始めた手のひらをぎゅっと握り、及川が、俺らのキャプテンが、全員の力を100%引き出して戦う姿を見届けた。
岩「及川!!」
及「っ岩ちゃん!」
最後の得点は
岩泉のスパイクだった。
ピーーーッ
大きく鳴り響いた笛にコートの中に押し寄せる日本の選手、そして念願の約束を果たせた優は俺の前で初めて声を上げて泣いた。
「よかったな、優。」
優「うん、ゔんっ、、、」
嬉し泣きをする彼女の背中を、泣き止むまでずっと撫でつづけた。