あなたの声が聞きたくて【another story】
第6章 松川一静
俺の理性という理性をフル動員して俺と同じ匂いのする優を抱きしめながら寝た。
あと少しで手の届かないところに言ってしまう彼女の存在を身体に覚えさせるよう、しっかりと。
「いっ、、、せ」
優は今、どんな夢を見ているんだろうか。
髪を梳くように撫でると、擽ったそうに俺の胸に擦り寄った。
「おやすみ、優。」
ピピピッピピピッ、、、
いつもより音量を低めに設定したアラームが頭上で鳴り、止めようとするものの腕が動かせなかった。
布団の中をそっと覗くと俺の腕の中でスヤスヤと眠る優がいた。
余りの無防備さに襲いたい気持ちが込み上げそうになるけど円周率を思い出すことでなんとか収まった。
アラームを止め、もう一度布団に潜り込み、苦しくない程度に力を込めて抱き締めた。
あー、しあわせ。
ガラじゃないけどそう思った。