第5章 ◆休暇の後
はぁ・・・。
「 ーーで?
どこに連れて行かれるんさ?俺。」
サラにガッチリと掴まれた
自身の腕を見ながら
目の前のサラの後ろ姿に問い掛ける。
その言葉は殆ど嫌味で、
ー・・・本当は部屋で寝たいのに・・・。
そんな意味も込めていた。
「 んーやっぱご飯、
食べに行こうよ。
きっと、リナリー達も居るよ。」
普通の受け答え。
前を向いているからサラの表情は分からないが
きっと、いつもの笑顔で話しているのだろう。
声のトーンに変わりない。
「 飯、ねぇ・・・。
俺は是非とも部屋で寝た」
「 あ、そうだ!
今夜は皆で外に行こうよ!
涼しいし!」
「 ・・・は?」
俺の意思表示は食い気味に消され、
またもや突発的に出るサラの提案。
本人は良い事でも思い付いたかのように
声を大にして話すが、
俺からすれば意味不明である。
それは、
思わず間抜けな声を上げてしまうほどに。
「 そ、外って・・・。
お、俺らさっき行ったさ?
帰ってきたばっかりさ?」
掴まれた腕の先
未だ俺の方に振り返ろうとしないサラに向かって
恐る恐る問いかければ
パッと手が離された。
「 ・・・?」
ついでに歩みも止めるサラに釣られて
俺もサラの後ろで一旦停止。
少し頭を傾げて目の前のサラに
視線を集中させた。
すると、
ゆっくりと顔だけ振り返るサラ。
「 ・・・花火がしたい。」
ニコッと笑って可愛くワガママを・・・。
・・・って!
ンなわけあるか!
「 はぁ?」
はなび・・・って
それ、日本にある火薬類だろ?
こんな所にあるわけねーさ!
しかも、危ねーから!
「 いや、はなび・・・って。」
脳内では早送りのように出てくる文句も
いざ言葉にしようとすれば口篭る。
あー俺疲れてんだ。
いつもなら、特に考える事なく
言葉に乗せて発するのに。
色々とありすぎて
脳の伝達能力が鈍ってるさ・・・。