第6章 ◆合同任務
「いや、そういう訳じゃ⋯」
アレンにしっかりと見据えられて
そっと視線を下へ外すサラは
どうも語尾が薄れかかってハッキリとしない。
ー⋯はぁ。
しゃーねぇな。ったく。
誰にも気付かれないような小さいため息を零して
俺はアレンが覗き込むサラの後ろへ立つ。
「サラ」
優しく名前を呼べば
少しだけ頭が上がって、
ぽふっとサラの頭に手を乗せて
そのままサラの顔を上げさせた。
途端に目が合う
サラの黄色人種特有の真っ黒な瞳。
上を向いたせいで光を帯びたその瞳には
綺麗に赤みがかかって、まるで宝石だ。
そんな宝石には
いつもより潤いが濃くて
「なぁーに、泣きそうな顔してんさサラ。
またデートすんだろ?
昨日行けなかった店、行くって約束忘れたんか?」
声はいつもより高めで
ニカッと笑ってサラへと問えば
宝石のような瞳は少しだけ細まった。
「ラビ⋯っ
⋯うんっ!」
そして上がる声色。
それは街に出かけた時に聞いていた
あの時のサラの声だった。